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パナマ帽をテーブルの端に置き、背もたれにもたれず、いつも背筋を伸ばし、持参した本を静かに読む男性。
ぼくは勝手に「カトケンくんのお兄さんみたいな男性」と心の中でいつも呟いていた。そしてもう一つ勝手に僕は思っていたことがある。それは、この「カトケンくんのお兄さんみたいな男性」はきっと近所に住んでいる人だと。ひょっとしたら最寄りのマンションの住人かもしれないと。
彼は来店頻度の比較的高い常連さんだった。
だけれど、突っ込んだ話がなかなかできなかった。それはあまりプライベートなことは訊かれたくないのでは・・・とぼくは思っていたからだ。
でも、今日は思い切って訊いてみることにした。
「お近くですか?」とぼく。
一瞬間があって、彼はニコリと笑って「いえ、近くではありません?」
「名古屋・・・ですか?」
「いえ小牧からです」
「え!!そんな遠くから!・・・電車でですか?」
「はい。電車です」
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こんな感じだった。
ついでにぼくは彼の名前も訊いてしまった。
これで「カトケンくんのお兄さんに似てる男性」と長いフレーズを頭の中で繰り返さないですむことになった。
まさか、そんな遠くから来てくれてたとは!
それが年に数回ならともかく、かなりの頻度で来てくれてる。
それに彼がスマホを出して写真を撮ってるところを見たこともない。
ぼくは、正直、ちょっと感動した。
感動しながら、とてもありがたく思ったし、とても嬉しかった。
彼は街歩きが好きで来た時には瀬戸の街を歩いて回ってるとのことだった。
ぼくは彼に瀬戸の辺境を訪れたか尋ねてみた。
車できてないのでもちろん辺境は行ってないとのことだった。
タイミングがあったら、ぼくの好きな瀬戸の辺境地帯を彼に案内したくなった。
10月の最後の日にとても嬉しい気持ちにしてもらって本当にありがとう、◯◯さん!
*写真は「パントマイム」で個展を終え搬出作業を終えたあと来てくれたYOKOZCOちゃんと居合わせた二人。
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