2022年6月6日月曜日

【20220606:月】+++ぼく的に瓦解した17才の帝国+++

 


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土曜ドラマ「17才の帝国」の最終回を見た。

ぼくは第2話まで繰り返し見るたびごとに涙していた。第2話まで。。。

その涙の理由の一つは、ぼくがすでに無くしてしまったものが描かれていたからであり、もう一つの理由は、AIの活用方に希望を感じたからだった。

人が集まると、それがどんなに民主的な組織であっても腐敗しはじめる。人類の歴史がどこまで長続きしたとしても、戦争が一向に無くならないのと同様に、組織は必ず腐敗する。少なくともぼくはそう思ってきたし、これからもそう思うだろう。

ジェンダー、出自、学歴、年齢、社会的ステータス、経験・・・ありとあらゆるものが差別の元となり、根回しや忖度がはびこり、人間の判断を曇らせ誤らせる。

正論を言うと、それを鼻であしらったり、空気が読めないと嘲笑う。理想よりも現実だとうそぶく輩が主流派を形成する。

それを批判している者自体も知らぬ間にその黒くて大きな渦にのみこまれ、大切な何かをなくしてしまう。

それが人間なんだと思う。

しかし、その人間集団にAIが加わることにより、ひょっとすると、今までとは違う、腐敗しにくい組織になるのではないかとぼくはこのドラマの2話まで見たところで希望を抱いたのだ。

産まれたときからデジタルデバイスに囲まれた若い世代なら、AIと協調しながら、AIの膨大な情報量と理論的な裏付けのもと、理想を追求することができるのかもしれないと思ったのだ。

それが2話までのぼくの感想であり、ドラマの中の架空都市ウーアで17才の真木総理がどんな政治をしていくのか期待していたのだった。


ぼくの期待の素となったのは、真木総理をはじめ、登場人物の語る言葉だった。

以下はぼくがメモしたものだ。(  )内はぼくの但し書き。


・経験は人を臆病にしたり、人を腐らせることもあります。


・新しい都市づくりに必要なのは変革と創造ではないかと。

・権力は腐敗します。監視の目がなければ。

・町全体が議会になるんです。(市議会を廃止した根拠の一つ)

・投票率の低い選挙で選ばれた人が、住民の声を代表するより全然良くない?

・潮の満ち引きによってあそこにはいくつものうずしおが巻くそうだよ。大きいものだと直径10メートルを超えると言う。飲み込まれないようにしないと。黒くて大きな渦に。

・17歳だからこそ思うことがあります。間違っていることを間違っていると言わない大人になりたくない。

・欲望にまみれた大人になりたくない。

・自分と自分の周りしか守らない大人になりたくない。そうなってしまう前に僕は未来を作りたい。ここで生きたいと言う社会を作りたい。

・僕がソロンと目指すのは、癒着やしがらみを廃した透明な政治。人々の声を聞き、受け止める謙虚な精神。助けを求める人々に、手を差し伸べ救う政治。以上です。

・僕は自分だけに便宜を図れと言う大人たちの言葉を聞くつもりはありません。

・今の僕は17歳は少しまぶしい。(平議員のことば)

・君のために世界を変える。僕を救ってくれた君がその優しさや正しさのまま笑顔で生きられる世界を作る。(リンカンの言葉から)

・自分が決めた人生なら、人生にふり回されても耐えられる。(鷲田総理の息子の言葉)


そして第3話から物語は一気に変調する。
ぼくをしらけさせたのは、真木総理の補佐官のサチを真木がユキと呼び間違えたことから2人の関係にひびが入ってからのくだりだ。
真木と付き合っているわけでもないのに、名前を呼び間違えられたことで、まるで恋人に裏切られたように真木を詰問し役目を放棄する痴話げんかになってしまったからだ。
お互いに好意はもっていただろうがあまりのありきたりな展開にぼくはかなりがっかりした。
結局、AIとの新しい政治に絡めた恋愛ドラマだったのか?!と。

そして最終回ではご都合主義的におさまるところにすべてがおさまってしまった。
ウーアの新総理にしろ、失脚した鷲田総理のあとの新総理にしても、あまりにも安直な大団円ではないかと。
ドラマ的には真木君のわずか3か月とは言え、彼が貫いた純粋さが、彼のまわりにいた大人たち、平議員や鷲田総理の孫や地元の有力者にも影響を与え、無駄ではなかったという落としどころになっているのだけど、結局17才の救世主は放逐されるという現実的な落としどころにするしかなったところがこの手のストーリーの限界なのかな。

こんな具合で、ぼく的には、途中で空中分解したようなちょっと残念なドラマになってしまった。
繰り返すけれど、この感想はあくあで「ぼく的」な、ぼくの個人的な感想にすぎない。念のためにね。

ぼくが第2話まで見たところで激賞してたから付き合ってみてくださった人にはこんな感想を書いて申し訳ありません。ごめんなさい!

蛇足。
でも主役の神尾楓珠も平議員役の星野源もよかった。神尾くんは文字通り美男子で、デビュー当時の柳楽優弥をぼくに彷彿とさせた。星野源は演技が上手でちょっと驚いた。それにエンディング曲の羊文学というユニットも知ることができてよかった。





5 件のコメント:

  1. ああ、羊、面白いですよね。うちにもCDがあったはず・・・

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  2. そっかぁ!笠井くんも聴いてたんだね。ドラマの中のAIのスノーの声は羊文学の女の子がやったんだよね。他の楽曲もチェックしてるところです。
    ぼくはまずもってユニット名にやられました。

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  3. 最近の若いミュージシャンには、ただただ驚かされます。
    僕やジュンさん(の世代)が聞いてきたあらゆる音楽を
    消化した、その上に成り立っている。

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  4. ドラマの声をやった子って、ボーカルの子かなあ?
    ドラムの子だったら、凄いんだけどな。

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  5. 笠井くんの言う通り。ぼくもラジオを聴いてて、「!」って思って調べた若いミュージシャンが少なくないです。ぼくがヒップホップみたいなのを聴いたりもしてます。
    DAOKOとか、robaiもそうです。
    ドラマのAIの声は塩塚モエカかな。ボーカルの子かな?

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