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地下鉄塩釜口駅近くにインドカレー屋さんがある。
ぼくがまだ学校に勤めていた頃から時々カレーを食べに行っていたので、もう10数年前からの付き合いになる。店主は娘さんをインドから呼び寄せ、公立高校に入学させたいとのことで相談を受けたことがあった。どこで日本語を習ったらいいかとか、高校入試のための勉強をどこですればいいかとかだった。そんな相談はもちろんはじめてだったので、自分なりに調べて教えたのを覚えている。
とても賢い娘さんですぐに日本語をマスターし、翌年には地元の優秀な生徒が通う県立高校に入学したことまでは知っていた。
その後、店主とぼくとの共通の知人であるラーメン屋さんのイチさんが急逝されたり、少ないながら店主と個人的なかかわりもあったりした。
その後、ぼくは早期退職し、VOUSHO Coffee Factoryの準備期間を経て開業し今に至っている。
あっという間に10年の歳月が流れた。
土曜の夜、久しぶりにこのカレー屋さんに行った。
もちろんマスクをして店内に入り席に着いた。
店主が水をもってきてくれて『先生、お久しぶりです。』とぼくに挨拶した。
ぼくは驚いた。
『え?! 覚えてるの?!』とぼくは思わず彼に言った。
『もちろんです。あのときは先生にお世話になりました』
店主の彼とこうして直接話すのは少なく見積もっても10年になる。コロナ禍でマスクをしてるのに彼はぼくを覚えていて、ぼくだとわかっていたのだ。
料理をオーダーする前に店主からその後の娘さんのことをきいた。
高校入学後にも紆余曲折あって、今は大学院に通って電気系の勉強をしているそうだ。
ぼくはお客さんの顔を覚えるのが得意じゃないし、マスク着用のため一層判別が難しくなっているのに、彼は一瞬でぼくを認識したことに驚かざるをえなかった。
と同時に足が遠のいていたことを申し訳なく思った。
その日、彼に今のぼくのことを話すのはやめた。
もうぼくは先生じゃないこと、自家焙煎珈琲店をはじめ来月で8年目になることを。
次回以降タイミングがあったら話そうと思った。
それと彼には到底及ばないけれど、ぼくももっとお客さんに注意を払うようにしないといけないと。
自分のことを覚えてもらってたことがこんなに驚くべきことで嬉しいことだとは。気付かしてもらってありがたかった。
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