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ときおりお客さんから言われるたびに違和感を覚えることばがある。
ぼくはそう言われるたびに、いわれのない申し訳なさと恥ずかしさを感じ、肯定するでも否定するでもない中途半端な表情のまま言うべきことばを見つけられず、すべてをのみこんで沈黙するのである。
『自分の好きなものに囲まれていていいですね。』
『自分の好きなものに囲まれていて羨ましい。』
ぼくは思うのだけど、ぼくらは日々選択しながら生きているわけで、できるだけ好きでないものを排除して生きること、好きでないものを選ばないで生きることは誰にでも可能ではないかと。
つまりは何に価値をおくかだ。
ぼくは何百万円もする車を所有したことも、そもそも新車を購入したことなど一度もない。海外旅行はおろか国内旅行もほとんどしていない。グルメでもないし、ファッションにも興味がない。賭け事もしないし、お酒にも溺れられない。
それだけのことだ。
ぼくの周りに置いてるものは高価なものなんて一つもない。その代わり時間をしっかりかけて集めたモノたちだ。確かにチリも積もれば山となるから、その山にかかった額を算出したら、新車を購入する額くらいにはなっていたと思う。
選択しただけだ。
好きなものに囲まれて暮らしたいと願うなら、多い少ないは別として、可能なんじゃないかと思う。
『時間と手間さえかければできますよ』ってこれからは黙ってないでこたえることにしてみるよ。
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