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人にぼくの思っていることを伝えることの難しさといったら相当なものだ。ぼくの語彙が足らないとか、表現力が乏しいとか、もちろんそういうことはある。確かにある。
そこでぼくはレトリックを極力用いず、ストレートに言うようにしている。婉曲にいえば言うほど相手には理解し難いものになると思うからだ。
ぼくのお店のことで言うと、例としてこんなことがある。
例えば、お店のギャラリーで個展をしたいと言う人がいるとする。
その人には配偶者がいてとりあえず生活するのに困らない程度の収入があるとする。だから個展で自分の作品を何としても売って生活費の一部に充てなければならないと言う切羽詰まったものはないとする。そうすると、別に自分の作品が売れなくても、個展さえできて、自分の作品を発表する場所がもてるだけでいいと思う人もいることだろう。いや、実際いる。お金さえおしまなければ、発表できる場所は巷にはいくらでもある。でも、出費はできるだけ抑えたいとも思う。それは誰だってそうだろう。
ぼくが応援できるとしたら、応援なんて言うのはおこがましいのは百も承知だけれど、少しでも売れるように一緒に考え、作家もお店も(つまりぼくも)努力を惜しまず両方が納得できる展示をすることだと思ってる。今時の言葉で言うと「win-winの関係」ってやつだ。
『売れなくてもいいんです』と言うなら、先ほど言ったようにお金さえおしまなければどこでもできるのだから他を探せばいいと思う。こう言う人の展示をするつもりはぼくにはない。
作家ならば、どうしたら売れるのか、売れる努力や工夫をしなければならないとぼくは思ってる。レストランのナプキンになぞり描きしたものが高額で売れるのは、極々限られた有名作家の場合であって、それは目指すべきものではないともぼくは思ってる。
ただし、結果的に売れなかったのは仕方ないと思う。
売れるよう努力したけれど、売れなかったのと、売る努力を始めからせず、売れなかったのとは全然違うと言うことだ。少なくともぼくはそう思ってる。
簡単に言うとそういうことなのだ。
でもこのぼくの意図が相手に間違いなく伝わるのかと言うと、結構そうではないような気がするのだ。 人に自分の考えをそのまま伝えると言うことは相当に難しいことだね。
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