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常滑在住の画家、岩崎里香さんの個展を見に長久手の飯島さんの欅舎へ。
里香さんは以前VOUSHOのグループ展『カフカ変身展』(2020年)に参加してもらった作家さんでもあった。
今日は里香さんの在廊日。
里香さんに作品の説明を受けながらゆっくり見ることができた。
今回の個展では彼女が名古屋でイラストレーターとして仕事を始めた頃の作品から現在まで35年間を通じての作品が展示されるとのことだった。
ぼくは地方誌『手の仕事』に里香さんが携わっていた時の挿絵だったりイラストだったりがとてもいいなぁと思っていたので初期の作品を見るのが楽しみだった。
銅版画や木版画は里香さん曰く「この頃のは暗い作品ばかり」と言ってたけれど、不安と孤独が作品から感じられてぼくは好きだった。
若い頃の作品で技巧的にも拙いから恥ずかしいと彼女は言っていたけれど、ぼくに言わせて貰えるならば、それよりも見た者に何かを感じさせる「波動」のようなものが放射されてることの方が余程重要だと思うのだ。
これは他の職業にも言えることで、例えばぼくがなりわいとしていた教職でも、教育実習生の研究授業の方がベテラン教師の授業よりも生きた授業だったりすることもあるからだ。教授法なんかは経験を積む中でうまくなっていくものだが、それよりも何かを伝えたい、わかりやすく教えたいと言う若くて生きのいい熱意に溢れた授業の方が熟練の授業をしのぐことだってあるからだ。
また個展の話に戻るけれど、里香さんの駆け出しイラストレーターの頃の押しつぶされそうな不安と孤独はぼくが想像する以上だったと思うくらいストレートにその作品に現れていた。
35年経った今、肩の力が抜け自分の周りを静かに見つめる、そんな里香さんの眼差しのこもった風景画は、古くなって壊れていくものや忘れ去られていくものへの優しさと慈愛に溢れていると思うのだった。
「今は楽しく絵を描いています」と言う里香さんの言葉にこれまでの彼女の画業や人生の変遷の重みをぼくは感じざるをえなかった。
*岩崎里香個展は10月13日(日)までの土日月のみ。
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