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何年ぶりだろう。
少なくともお店をはじめてから泊をともなう旅は一度もしたことがなかった。
それだからこそ、今年の個人的な目標の一つにぼくは一泊でいいから泊まりがけの旅をすることを掲げたのだった。
自分の節目の日に只々海を眺めて過ごしたかった。浜辺を散歩したりもしない。波の音と鳶の鳴き声をBGMに本を読んで過ごす。
そんな贅沢な時間を一年に一度巡ってくる今日してみることに決めたのは、一昨日の深夜のことだった。
4月6日チェックイン、7日チェックアウト。
大人一名。
オーシャンビュー。
昨日は曇天。
海と空の境界もあいまいだった。
でもぼくはそれも嫌いじゃない。
部屋に備え付けの椅子をベランダに持ち出し、iPhoneでニルス・フラームのプレイリストをかけながら、瀬戸内海のようなおだやかな海と鼠色の空と遠く対岸の灯りの点滅を見るともなくぼんやり眺めていた。
翌朝。
ぼくは6時半に強い陽射しの中目覚めた。
ぼくの個人的な節目の日の朝陽だった。
青空の端にまだ昨日の雨をもたらした雲が役割を終えて消えいろうとしてるところのようだった。海は黄金色に細かく輝いていた。
10階のぼくの部屋を覗くように鳶がゆっくりと優雅に旋回していた。
身震いするくらいの冷たい空気を肺にいっぱい吸い込んだよ。
チェックアウト後、やはり海岸を散策することもせず、ぼくは帰路についた。
ぼくにしては自分休めのいい旅だったし、それゆえ近場だったけれど思い出に残る旅となったんだろうね。
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