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手術後は退院するまで個室だった。
個室代がかかるだけあってテレビと冷蔵庫が無料だった。
BSを見ることができたので、気を紛らわすためにドキュメンタリーや映画を見たりしてた。
たまたま平尾誠二と山中伸弥の交友を描いた番組を見た。
雑誌の対談で意気投合してから平尾が末期の胆管癌で亡くなるまでの物語だった。
それとは別に地上波で黒沢清監督の「岸辺の旅」も見た。彼の作品はポルノ監督デビュー作「神田川淫乱戦争」とホラー映画「地獄の警備員」 しか見てなくて、こんなに力量のある監督なんだとこの映画を見て初めて知った。かなり好き。長回しも風の使い方も。
「岸辺の旅」の主人公(深津絵里)の夫(浅野忠信)は3年間失踪ののち突然帰ってきたのだがこちらの世界ではなく彼岸の世界の人になっていた。彼が失踪中のゆかりの場所と人を再訪し、夫婦として旅する中で彼のことをより深く理解していくというものだった。ありえない設定でありながら、違和感なく、切なく感じさせられたのは監督の力なんだと思った。
とにかくこの二つはどちらも『死』に関する題材だった。
ぼくは『生』と『死』は二項対立的なものでなく、『生』の中に『死』も含まれたものであるという捉え方をしている。簡単に言ってしまうとそういうスタンスでいる。
人生2度目の手術をした後ということもあって(それがたとえ今回のような盲腸の摘出手術であっても)、『死』ということをいつも以上に意識することになった。
どんなに健康そうで、強靭な肉体を有していても、普通の風邪をこじらせて死ぬことだってあるし、飼い犬に噛まれて破傷風になり死ぬことだってある。ほんの一瞬よそ事考えてハンドルを切り損ね激突死することだってある。大病をしなくても死ぬ時は人はあっという間に死んでしまうものだ。生きてる中に死の影は誰にだっていつもついてまわってるってことだとぼくは思う。
だから、この健康が、今のままずっと続いていくという前提でぼくは考えられないし、それだからこそ、一日一日を自分なりに生き切るようにしたいなと思っている。
腹式呼吸と同様にぼくには難しいことではあるのだけど、そうできたらいいなぁと思ってる。
今、ふと思い出した。
濱田マリの言葉。
『夢はもたない。今をゆるく楽しむ』
先のことより、今だとぼくも思うから。
もう一つ考えたのは、ぼくの人生のロスタイムのこと。
ぼくがある意味『今』を大切にするために教師を早期退職し、このお店を始める準備を開始してからこの4月で丸8年になる。実にあっという間だった。
例えば80歳まで生きたとしても、残り時間は8年の約2倍しか無いということ。
欲張りなぼくはこれから何をしてどのように死にたいか考える時かもしれないと思うのだった。
なんだか暗い話になっちゃったかな?
すみません。
「日にち薬」っていいです。
今日はクシャミしても痛みが5分くらいで消えるようになったので、もう咳も、ウンチで踏ん張るのも恐怖ではなくなりました。クシャミの痛みが断然強かったし、その痛みも声を出さないで済む程度に軽減してきたからね。ありがたいです。
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