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久しぶりに映画の感想を記してみる。
映画「海炭市叙景」の熊切監督で音楽が同じくジム・オリーク、主演が菊地凛子。
東京から青森までのロードムービーときいては見ずにいられなかった。
2022年製作でコロナ禍が落ち着きはじめて久しぶりに撮った映画だったと熊切監督が語っていた。
ぼくはDVDを購入し見ることにした。
ここからはぼくの個人的な感想なのでそれに惑わされず実際に自分で観て良し悪しを判断してほしい。
というのも、ぼくはちょっとこの映画にのめり込むことができなかったからだ。
良い映画だと思うのだけど、何がぼくのこころを震えさせなかったのか考えてみた。
一つは、この映画は菊地凛子で始まり、菊地凛子で終わる映画だったということ。
彼女の演技は先輩共演者が言う通り役柄が憑依したような演技だった。とてもうまいのだと思う。
菊地演じるところの主人公には人とのコミュニケーションになにがしかの問題があるのも見て取れるし、ヒッチハイクをしながら徐々に他人に自分の気持ちを言葉や表情、態度で表現できるように変化していくのもわかる。
でもぼくには何か違和感が残るのだ。
そもそもこの主人公がヒッチハイクをして青森を目指すことをチョイスするかということだ。おそらくここでまずぼくはつまずいてしまったのだろう。
何週間もヒッチハイクをしたわけでなく、翌日のお昼過ぎに到着するわけだから、結局1日半くらいのはなしだ。
ヒッチハイクで拾ってくれた人たちもそんなに多くない。5組くらいのことだろうか。
またその人たちがそれぞれに特徴のある人たちでそれもぼくを白けさせることになった。
ラブホテルでほぼレイプに近い扱いを受け、そこから逃げるように一人海辺に向かい、真冬の浜辺で行き倒れのように横たわっているシーンや、そこから起き上がり暗くうねる冬の海を見つめるシーンなど絵的に印象的なシーンもある。
でも、ぼくはいつも海のシーンで思うことだけど、この映画の場合、真冬の東北の波打ち際に横たわり、波に洗われるに任せる人っているのだろうか?ということだ。
そもそも波がまだ来ない干潮だったとしても湿った砂の上に横になるだろうか?真冬の東北だよ。
服も靴も髪の毛も下着も海水で濡れ、事後処理がとんでもなく大変なはず。
風も吹いてるので、寒さでカラダは震え低体温症になり生命の危険だって考えられるほどじゃないのかな。どう考えてもそんな状態で冬の海を茫然と眺めていられないはずだ。
また、登場人物のキャラクター設定もはっきりしすぎてるようにぼくには思えた。
ステレオタイプとまでは行かなくてもね。
この映画に感銘を受ける人はきっと多いだろうし、良い映画に違いはない。上海の映画祭では賞も獲得している。
でもぼくには安直なものに思えてしまう。
就職氷河期で夢破れた女性、20年地元に帰っていない、突然の父親の訃報と里帰り、父親との確執の記憶、高速道路サービスエリアで置いてけぼり、ヒッチハイクで葬儀に向かう、ヒッチハイクしてくれた人とのぎこちないやりとり、レイプ、冬の海、震災被災地、雪の降る実家・・・。
あれこれ詰め込みすぎではないだろうか。
やはり菊地凛子で始まり、菊地凛子で終わる、彼女の演技力だけが際立ち印象に残った映画だったように思えた。
ごめんなさい。
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